2005年10月25日

「地下鉄(メトロ)に乗って」 浅田次郎

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浅田次郎を2連チャンで読んだ。前から気になっていた本である。

「地下鉄(メトロ)に乗って」は、前回読んだ「椿山課長の七日間」とはうってかわって、終始どんよりとした空気が漂う作風になっている。色で喩えるならば、彩度の低いセピアカラー。それは私が、この本に出てくる昭和初期、戦時中や戦後の混乱期を、モノクロームの写真でしか見たことがないせいかもしれない。

今も昔の面影を微かに残す東京の地下鉄。東京の街を時代と共に走り続けた「メトロ」が主人公を過去へと導く。「兄の自殺」の真相、父との確執、その父が戦後の混乱の中、財を成していく様。そして、不倫相手の女のあまりに残酷な生い立ち...

タイムスリップやタイムパラドックスを描いたSFチックな世界なのだが、なぜかそれを感じさせない。やはりそれは、全体を「セピア調」に包む雰囲気のせいだろうか。

なお、この作品も映画化が決定しているそうだ。来年の公開予定。「セピア感」が上手く表現されていると嬉しいが...

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